BACKNUMBERS
バックナンバー:2012年12月13日 配信号 収録

《shadowtimes》 Post.3 「船が行く」港千尋

《shadowtimes》 Post.3 「船が行く」港千尋

あれは長野県新野の「雪まつり」を見に行った道すがらだった。険しい山道を抜け、川沿いの道に入ってしばらくすると、電信柱にある地名の表示に「海」なる字がある。それは長野と愛知の県境、太平洋から遠く離れて海などもちろん見えはしない。見たところ住んでいるのかいないのか分からない民家が一軒あるだけの、山の中に「海」。そこはかつて「雪まつり」を見に徒歩で山越えをしたという折口信夫が通ったというところで、不思議な地名は、なおさら記憶に残ったのだった。きっと似たような地名は、他の地域にも見つかるだろう。たとえば日本海からも太平洋からも遠い山に囲まれた土地に「会津」という地名がある。船が停泊できる港などない盆地で、なぜ海上を行くような地名が現れるのだろう。山奥へ行けば行くほど、海洋の記憶が強く現れるのだろうか。それとも水の流れが地名を引き寄せるのだろうか。この秋、熊野の海と山のあいだを走りながら、そんなことを考えた。

この記事は、ログインすることでご覧いただけます。

RELATIONAL ARTICLES
関連記事

《Days and Lights》Post.3「attraction」勝又邦彦

子供の頃家にはミッキーマウスの縫いぐるみがゴロゴロしていた。ディズニーが好きなわけではない。 鹿とダルメシアンは好きだったけれど、動物のデザインとしてのそれが先でディズニーのバンビや101匹わんちゃ…

《shadowtimes》Post.9「バルの春」港千尋

国によって違いはあれど、春の訪れは誰にとっても待ち遠しいものだ。北の大地はまだまだ深い雪のなかにあるが、南では枝先に緑が芽をふきだした。路上に人の姿が戻ってくる。そんな季節にスペインを訪れている。 …

《Days and Lights》Post.2「sunshine」勝又邦彦

サンプル号でスザンヌ・ムーニー氏の池袋のサンシャイン60ビルから撮影された作品「Tokyo Summit A」をご紹介した。 そのときのテキストにもあるように「サンシャイン」というほとんど固有名詞化…

《shadowtimes》Post.7「モクテズマ・デー」港千尋

中国や台湾では春節の休みがつづく今日、世界中でさまざまなプレゼントが贈られる。花束、クッキーそしてなんといってもチョコレートだが、やはり日本における売り上げはダントツらしい。 中南米原産のカカオ豆を…

《Days and Lights》 Post.0「Hotel's Window」勝又邦彦

記念すべき初回ではあるが、たまたま9月1日より私が関わる二つの展覧会が開催されているのでご紹介したい。まずは作品を出品するグループ展『Over the reality』について。 会場は清澄白河…

カテゴリ別バックナンバー

FACEBOOK

TWITTER